「ヤマハ発動機、2025年12月期は大幅減益予想」。このニュースを見て、保有株を売ろうか、あるいは購入を見送ろうか迷っていませんか?

確かに、直近の決算見通しでは、米国市場での在庫調整や関税リスクの影響を受け、営業利益が前期比で約3割減となる厳しい数字が並びました。しかし、数字の表面だけを見て判断するのは早計です。なぜなら、今回の発表には投資家にとって最も重要なメッセージが含まれていたからです。

それは、「大幅な減益でも、配当金は減らさない(50円維持)」という強烈な株主還元へのコミットメントです。配当性向が100%を超えてでも配当を守る姿勢は、同社の財務に対する絶対的な自信の表れでもあります。今回は、株価が解散価値(PBR1倍)付近まで調整した今こそ知っておきたい、ヤマハ発動機の「底力」と「買い時」について徹底解説します。

【A-評価】ヤマハ発動機(7272)は買いか?利回り4%超・総還元40%以上の「株主還元力」

ヤマハ発動機 (7272)

「総還元性向40%以上」の公約。減益でも配当維持の底力。

市場:東証プライム 業種:輸送用機器 時価総額:約1兆2,000億円 大型バリュー

【会社概要】どんな会社?

二輪車で世界2位、船外機(マリン)などの水上オートバイで世界トップクラスのシェアを誇る輸送用機器メーカー。 特にマリン事業は利益率20%前後を稼ぎ出す高収益なコア事業であり、全社利益の大半を牽引する。 さらに、産業用ロボット(マウンター)や電動アシスト自転車(e-Bike)など、多角的なニッチトップ製品群を持つ。 株主還元への意識が非常に高く、機動的な自社株買いやDOE(株主資本配当率)を意識した配当政策が特徴。

  • 事業ポートフォリオ:二輪車(新興国中心)、マリン(先進国中心)、ロボティクス(成長期待)。
  • 財務基盤:自己資本比率 40.2%。ネットD/Eレシオ 0.55倍と健全。
  • 還元姿勢:「総還元性向40%以上」を下限とし、減益局面でも配当を維持する方針。

投資ハイライト: 【総合評価 A-】 長期保有推奨 (高配当・押し目買い)

  • 還元コミットメント: 2025年は大幅減益予想だが、50円配当の維持を明言。実質的な「累進配当」姿勢への信頼感が高い。
  • 岩盤のPBR1倍: PBR 1.06倍近辺(約1,140円)は解散価値と同等。ダウンサイドリスクが限定的。
  • 構造的強み: 米国在庫調整は一時的。マリン事業の高収益体質(経済の堀)は崩れていない。
  • 【結論】 業績の谷間にある今は「優良株を安値で仕込む好機」。利回り4%超を享受しつつ回復を待つ戦略が有効。
予想配当利回り

4.14%

配当 50円 (減益でも維持)

PER (25/12期予) / PBR (実績)

26.1

/

1.06

PERは一時的要因で高騰。実力値では割安。

ROE (25/12期予)

約4.0%

※目標15%水準。一時的要因で低下中
自己資本比率 (財務評価:A)

40.2%

ネットD/E 0.55倍で健全

最重要指標①:配当トレンド(減益でも維持)

配当金の推移と利回り (中間・期末内訳)

2024年1月の1:3株式分割を考慮した数値です。2025年12月期は業績が厳しいものの、50円配当の維持を予定しています。
棒グラフの■濃い赤色が期末配当■薄い赤色が中間配当です。半期ごとに安定した還元が行われていることがわかります。 また、点線は過去10年の平均利回り(約2.9%)を示しており、現在の利回り(4.14%)がいかに高水準であるかが一目瞭然です。

※2024年に1:3の株式分割を実施。グラフは遡及修正後の数値。中間・期末の内訳は一部推定を含みます。

最重要指標②:EPSと配当性向の乖離

2025年(予想)にご注目ください。棒グラフ(EPS)が大きく落ち込み、折れ線(配当性向)が100%を超えています。 通常であれば減配となる局面ですが、あえて配当を維持することで、株主への還元姿勢を明確に示しています。 これは「総還元性向40%以上」という下限設定と、豊富な内部留保があるからこそ可能な戦略です。

最重要指標③:業績サイクル(調整局面)

売上高(棒グラフ)は2.5兆円規模で横ばいですが、利益率(折れ線)が2023年のピーク(10.4%)から急低下しています。 これはコロナ禍特需の反動による米国在庫調整が主因です。過去10年の推移を見れば、利益率は構造的に上昇傾向(5%→10%)にあり、今回の調整が完了すれば再度の利益率改善が見込まれます。

最重要指標④:買い時判断と株価推移

株価は調整局面にありますが、PBR1.0倍ラインが強力なサポートとして機能しています。
(※チャートは楽天証券より)

ヤマハ発動機 (7272) 10年月足チャート

株価パフォーマンスとリスク特性

  • ボラティリティ(β値) 1.04

    市場連動性が高いが、景気敏感株のため下落時は売られやすい。

  • 直近1年騰落率 -15.2%

    市場平均に対しアンダーパフォーム。逆張り投資の好機。

  • PBR 1倍水準株価 約1,140円

    解散価値ライン。ここを割れば絶好の買い場。

理論株価と買い時判断

フェアバリュー (実力PER基準) 業績回復後のEPS 150円×PER 10倍
1,500円〜
打診買い推奨 (利回り4.2%)
1,190円以下
Strong Buy (PBR 1倍割れ)
1,140円以下

現在値(約1,206円)はPBR1.06倍と底値圏にあります。1,100円台への突っ込みを警戒しつつ、時間分散での買い集めが推奨される水準です。

財務健全性:製造業として十分な水準 (評価:A)

金融サービス事業を抱えながらも自己資本比率40%を維持。手元流動性も潤沢で、不況期でも研究開発や配当を継続できる体力があります。

指標数値 (25/9末時点)評価
自己資本比率40.2%製造業の安全目安30-40%をクリア。
ネットD/Eレシオ0.55倍1倍以下で健全。成長投資と還元のバランス良し。
流動比率159%流動資産が負債を大きく上回り、資金繰り懸念なし。

SWOT分析:強みとリスク

S 強み (Strengths)

  • マリン事業の圧倒的収益性 (利益率20%超)
  • 新興国(インド・ASEAN)での強力なブランド力
  • 財務体質の強さと還元へのコミットメント

W 弱み (Weaknesses)

  • 四輪車を持たず、規模の経済では競合に劣る
  • 為替感応度が高い (海外売上比率90%超)
  • 欧州・米国市場の景気変動を受けやすい

O 機会 (Opportunities)

  • インド市場のプレミアム化 (高単価バイク)
  • E-Bike (電動アシスト自転車) の世界展開
  • ロボティクス (半導体・電池製造装置) の需要増

T 脅威 (Threats)

  • 米国関税リスク (トランプ政権等の保護主義)
  • 環境規制の強化と電動化コスト
  • 地政学リスクによるサプライチェーン分断

競合他社比較 (バリュエーション・特徴)

社名 PER(倍) PBR(倍) 利回り 特徴
ヤマハ発動機 (7272) 26.1 1.06 4.14% 利回り・還元の質が高い。PBR1倍で割安。
ホンダ (7267) 9.7 0.57 4.49% 超割安だが四輪低収益。自社株買い積極的。
スズキ (7269) 11.5 1.42 1.93% インド最強。累進配当だが利回り低い。
川崎重工業 (7012) 22.9 2.46 1.37% 防衛・航空宇宙。インカム狙いには不向き。

分析:スズキは成長性が高いが利回りが低く、ホンダは割安だが四輪事業のリスクがあります。ヤマハ発動機は「高配当 × 還元姿勢 × 独自事業(マリン)」のバランスが最も良く、インカム投資のコアに適しています。

結論:投資判断は「A- (長期保有推奨)」

ヤマハ発動機は現在、業績の踊り場にありますが、そのブランド力と財務基盤は盤石です。 特筆すべきは、減益予想でも配当を維持する「株主還元への強い意志」です。これは長期投資家にとって最大の安心材料です。 PBR 1.0倍割れ(1,140円以下)は歴史的な安値圏であり、利回り4%超を享受しながら次の成長サイクルを待つ戦略が極めて合理的です。 新NISAでの長期保有、または配当再投資の対象として自信を持って推奨します。

評価カテゴリー別スコア

カテゴリー ランク 評価の根拠
株主還元 S 総還元性向40%以上を下限設定。配当性向100%超でも減配しない姿勢はS評価に値する。
競争優位性 A 大型船外機での高シェア・高収益性は強力な「経済の堀」。ブランド力も高い。
財務健全性 A 自己資本比率40%超、ネットD/E 0.55倍。バランスシートは強固。
割安性 A PBR 1.06倍は解散価値水準。見かけのPERは高いが実質割安。
成長性 B- 短期的には在庫調整と関税リスクで減速。インドやロボティクスの再成長待ち。

このコンテンツは、情報の提供を目的としており、売買の推奨等を目的としたものではありません。投資判断はご自身の責任で行ってください。
※データは提供された分析レポート(2025年12月22日時点)に基づいています。

結論として、現在のヤマハ発動機は「長期投資家にとって、絶好の仕込み時」であると判断します。

直近の業績悪化は「米国の在庫調整」という循環的な要因が主であり、世界シェアNo.1を誇るマリン事業の構造的な競争力が失われたわけではありません。むしろ、業績の谷間においても「総還元性向40%以上」の公約を守り、配当を維持した実績は、長期保有する上での大きな安心材料となります。

株価はPBR1.06倍(約1,140円近辺)という、これ以上下げにくい「岩盤」の価格帯にあります。リスクを限定しながら、4%超の配当インカムを受け取りつつ、業績回復による株価上昇を待つ。この戦略は、新NISAでの資産形成において非常に合理的です。目先の減益に惑わされず、このバーゲンセールを冷静に見極めていきましょう。


この記事が、皆様の市場理解の一助となれば幸いです。ただし、本記事は特定の金融商品の売買を推奨するものではなく、情報提供のみを目的としています。投資に関する最終的な判断は、ご自身の責任においてお願いいたします。

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